*柄と模様について。

先に簡素と複雑について述べたが その複雑さに重要な役割を果たしているものの一つに柄と模様がある。この柄が最初に印象的な登場を果たすのは「街路」の後ろ姿の女性の帽子であり 次に「キャシーの化粧」の足元の絨毯の模様などである。帽子の十字は時代を超えた柄であり その形と赤い色によって街の活気を生み出す役目も果たしている。キャシーの足元の絨毯は虚飾への憧れを演出している。また柄と模様はその装飾性と複雑さで画面の充実度を上げる役割も果たし 「夢 2」では画面は模様に占有され 「黄金の果実」では椅子の背もたれも模様の一部になっている。またかなり大胆に個性的な柄や模様を用いている例もある。「身支度をする若い娘」の壁の矢がすりのような模様 「夢 1」の奥の壁の市松模様 「暖炉の前の裸婦」の壁の丸みがかった模様 「トルコ風の部屋」の壁も個性的だ。これらは模様の方が主役ではないかと思えるほどであり 柄と模様に対する強い関心とその効果の追求が試みられている事が分かる。「トルコ風の部屋」の壁の模様はヴラ・メジチ館の 1室にあるが モンテ・カルヴッェロの浴室も この模様のタイルで設えてある。また日本的な柄と模様を使い 異国情緒を与えている作品もある。「黒い鏡と日本人」の敷物など。また「鏡猫 1」のように柄と模様と皺を構成的にまとめあげた作品や「鏡猫 3」のように柄も模様も皺も溶け込んで 一体化しているような例もある。このように多様な柄や模様が描かれているが それぞれに印象的であるが 中には調和的とは思えない場合もある。「まどろむ若い娘」では様々な柄と模様を配して充実し過ぎではないかとも思えるほどだ。しかしこのような過飾性はヨーロッパ文化の装飾の持つ重厚緻密を引き継いでいるからだが この考えの基は装飾は汲んでも尽きぬ豊かさの象徴であるからだ。つまり氏の柄と模様も その複雑な形や色彩によって埋め尽くす際限のなさよりも 圧倒する密度がもたらす充実感を求めているからである。

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