姿勢の再現。

描かれた姿勢を実際の人体を使って再現して見ると これらの姿勢がいかに熟考されているかが良く分る。その姿勢はごく自然に見えるが 実はかなり微妙で凝っている。これは高度な均衡の上に成り立っいるからで その造形感覚と構築力は見事と言える。そして写実表現であった時期の作品でも 実際のに対して 必ず微妙な調整が行なわれている。また当然だが具象表現に移行した後では もっと大胆な形が行なわれている。

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*3 なぜ人物達は石像化したように動きがないのか

身振りと姿勢については先に述べたが それは演劇的であると同時に動きを止め*石像化しているようだとも言われている。ここで言う動きとは 主に写実表現が獲得していた動勢感の事であるだろうが これらと見比べれば 確かに動勢感はない。しかし技法上で形の明確さを優先すれば 動勢感を生み出す事は難しくなる事も事実である。つまりバルテュスにとっては動勢感よりも 身振りや姿勢の特異性の方が重要であり 動きよりも演劇的な効果を重要視していたからだろう。こう考えるとバルテュス自身は動勢感の無さを 新鮮で独自性があると評価された事を思いがけない解釈と受け取ったかも知れない。 

* アルベール・カミュ著「反抗的人間」の中の「忍耐強い泳ぎ手」より。
「・・・・・一種の魔法の力で 永遠にではなく五分の一秒間 過ぎてしまえばまた動き出すようなほんの束の間だけ石と化した人物を眺めているような気がするほどである。」
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