342

「天使の休息」

P342。「鏡を持つ裸婦」 163×130㎝ キャンバスに油彩 1981-1983
天使の休息。この作品は3作目の立ち姿の裸婦になる。あの P334の「横顔の裸婦」で到達した高みで描いた最終的な作品である。先の作品と同じく簡素化され 具体的な物は少ないが もはや描き込まれてもいない。渋く暗めの室内に幼さない娘は立っていて その髪は黄金色に輝き 額は丸く 顔つきはあどけないが利発そうだ。片手を腰の後ろに回し もう一方の手に手鏡を持って自らの顔を映している。足はそろえて裸足だ。小さな乳房はやはり高い位置にあり 胴にくびれはなく 下腹はふっくらと膨らんでいる。この裸体は性の区別さえない未分化の肉体のように 男女の性の特徴は曖昧にされている。未発達な両性具有者か まるで細長い木の枝のようだが やはり未発達の幼女の特徴を見せている。それは小さな乳房が高い位置にある事と下腹の膨らみである。
このごく自然な立ち姿は 何気なく手鏡を見ていると言う感じだ。この何気ない仕草や立ち姿 そしてその表情は自らの姿に見とれているようには見えない。それはまるで羽をたたんだ天使が休息中に鏡を見つけ その使い方を探しているようだ。彼女らは自らの美しさを確かめる必要などない。美そのものである彼女等は自らの美しさを確認したり 作り出したり 守ったりする必要はなく また驕る事も見せびらかす事もない。つまりこのあどけなく無邪気な幼い娘達は 美そのものであるが その事を知らない。このような幼い美を持つ者とは つまり天使に他ならないだろう。