341

「幼き娘の意志」

P341。「スカーフを持つ裸婦」 163×130㎝ キャンバスに油彩 1981-1982何と言う立像だろう。背筋を伸ばして真直ぐに立つその姿は まるでエッフェル塔のように立ちはだかり その場に君臨しているようだ。
片腕を頭まで上げ腋窩を見せ 眼はクリリとして真直ぐに前を見ている。その頬は赤く染まり 乳房は幼ない者の小ささで かなり高い位置に描かれており その下の胴は丸く くびれはない。ふくよかなお腹は内臓の艶やかさまで表しているようだ。太くて長い足の片方は一歩踏み出され 両足はしっかりと床を踏み強いている。右手は軽く曲げられ青い布を持っており それはまるで戦士の楯のようでもある。この幼き娘は何かに立ち向かっているのかもしれない。美そのものとしての溌溂たる充実感に満ちながら・・また彼女は立ち向かう戦士のようだが 大海を前にして青い旗を掲げる大いなる帆船かもしれない。この椅子と扉しかない室内の中で彼女は帆船と化し 風を受け 陽光を浴び 雲を切って進む者なのだ。それは彼女が意志を感じせさせるからだ。ここには美たる者の意志がある。
そして過去にバルテュスが描いた通りを歩く人物達は 動きを失ったように静止し 石化している言われていたが この裸婦はすでに石化する事から逃れ 羽ばたくための羽を育み終えて 遠くに飛びたとうとしているようだ。しかし色彩は全体に沈みがちで 構築的な姿勢は娘の意志に反して その羽ばたきを押しとどめているようにも見える。バルテュスは彼女の意志を賛美しながら このままでいることを願っているのようだ。