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ロシニエール時代 1977-2001 69才-93才 P336−P353 17点+4点=21点 計356点

スイスのロシニエ−ルに転居。晩年の時期で2001年の永眠まで24年間あるが作品は少ない。しかし晩年の代表作で それまでの集大成である「鏡猫1,2,3 」や立ち姿の裸婦などを描いている。他に風景画 眠る人 室内画 また珍しい非現実的で難解な作品も描いている。これらはバルテュスの画家としての到達点を示す最も重要な作品である。他に「モンテ・カルヴェッロの風景」「画家とモデル」「スカーフを持つ裸婦」など。さらにレゾネに掲載されていない「眠るオダリクス」「モロッコの思い出−馬上の自画像」「真夏の夜の夢」 そして遺作となった「マンドリンと若い娘 (期待)」の4点を加えると計 21点。

「ささやかな共感」

P336「起床」 169×159.5㎝ S100号程度 キャンバスに油彩 1975-1978
ローマ滞在中から描かれていた作品でロシニエ−ルで完成される。寝台の上の裸婦は幼く 手に鳥のおもちゃを持ち 籠から出た猫がそれを見ている。色彩は灰色がかったくすんだ土色系が使われ 線描はわずかな細部に使われているのみで 娘の黒い眼と猫の瞳と耳 そして青い鳥に入れられた赤い線である。その赤い線は鳥が細かく震え または羽ばたきようにも見える。この赤い線は青い鳥を主役として際立たせ 娘と猫の視線を集めている。娘は鳥を猫に見せ 猫は小さく鳴いてそれに答え 見上げている。娘はその猫の反応を見て微笑んでいる。お気に入りのおもちゃに反応する猫は そのおもちゃを娘と供に楽しむ事であり ささやかな共感が生まれている。それは猫をからかう娘の悪戯心であっても同じだ。このような娘と猫のやりとりは微笑ましい。しかしこのやりとりの中で娘が裸体である事は この微笑ましさに肌の暖かさとその肌の微かな匂いを秘めながら 漂わせているようだ。
寝台の上の裸婦と猫という画題は P156の「若い娘と猫」にあるが これは30年前の1945年に描かれている。また同じ頃に描かれた P155の「美しき日々」は長椅子の上の娘が手鏡を持っている。そして寝台の上の裸婦が手鏡を持っている作品は1963年から 1966年に描かれた P329の「トルコ風の部屋」である。この間に寝台の上の裸婦と猫を描いた作品はない。このように長い期間が開いているにも関わらず これらは晩年の傑作である「鏡猫」に深く関係している。