308
P308。「少年と鳩」 162×130㎝ F100号 キャンバスに油彩 1959-1960
この作品は朗らかさに満ちている。しかしそこには不思議な造形感覚も同居している。卓の上の観葉植物に水を与えている少年は 窓に映った鳩の影を見て微笑んでいる。植物を愛おしみ 鳥達の姿に微笑みかける少年の眼差しと微笑み そのふっくらとした頬は純朴な朗らかさに満ちている。しかし少年の着ている衣服は変わった模様で時代離れをしているし その身体は東洋の釣り鐘の形のように裾が僅かに広がっている。またテーブルの上は布が掛かっているのに市松模様になっている。右端のカーテンの止め帯びには他の作品にも描かれている中国の模様が描かれている。そして窓枠やテーブルの上の器などは 立体感を省かれて平面的に描かれている。さらに少年が左手に持っている棒は何に使うものだろう。天窓を開閉するためのものだろうか。つまりここには穏やかな陽光に包まれた少年の純朴な朗らかさと共に 印象的な模様や形が使われ それらは平面的な描き方がされている。すでにこの頃ではバルテュスの描き方は完全な具象表現になっているが 作品の内容はあくまでも現実を基にしており そこに含まれている本質や実質を的確に捉えながら それらを現実の形ではなく 自らの考え出した形を与えている。バルテュスの具象表現では その個人的で特異な造形感覚によって作られた形を味わい 楽しむべきだろう。この作品では朗らかで微笑ましい日々の暮らしの一コマが 個人的な造形感覚で描かれているが その何ごともない光景は一種の夢幻性をも生じさせているように思える。日常の夢幻性。