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P298。「シャシーの農場 (春)」 116×89㎝ F50号程度 キャンバスに油彩 (1958)
シャスイの中庭に立つ門を右側の棟から見た風景である。杉の巨木が立ち 生い茂る樹木の間から2本柱の門が見え その奥に納屋とアーチ型の門が枝の間から見える。ちょうど P235の「シャシー農場の中庭」と同じ2つの門を右側のやや上から見ている事になる。この作品も 1954年に描かれた中庭と同じく 構成的な風景画で2本柱の門を中心に その奥の納屋やもう一つの門を描きながら その手前の樹木の生い茂った枝葉も充分に入れている。しかし所々にバルテュス特有の見慣れない線や形を見つける事ができる。これは実際の風景が変えられ 創意によって加えられた所に見られる特徴である。ここでも現実と創造の組み合わせが行なわれている。そこには時に見慣れないゆえか 不安定が生じたり妙な形が見られたりするが ここにバルテュス特有の造形と構成感覚が伺われて面白い。
実際のシャスイの館の2つの門の前は遠くに広々とした丘陵が広がっていて 納屋越しに描かれた丘陵と建物をこのように見る事は出来ない。

P299。「農場」 81×100㎝ F40号 キャンバスに油彩 (1958)
この作品もシャシーの2本柱の門とその向うにある納屋を描いている。先の P298の「シャシーの農場(春)」とは反対側の館の左側から描いている。中庭の樹木と納屋が画面を大きく占め 屋根の向うに丘陵が遠く広がっている。樹木と丘陵の緑色と納屋の白っぽい茶色が対比関係にあり 濃密な樹木と薄塗りの納屋と門の塗りの厚みの違いも対比的である。この明るさと塗りの軽さも晴れやかで気持ちがよいし 濃密に描き込まれた樹木も手応えがある。手前の樹木の位置は実際とは異なるだろうし 遠景の丘陵の畑の形もかえられているだろう。これも現実と創造の組み合わせで 丘陵の畑の形は特に不定形の持つ妙さが見られる。門や納屋の直線と丘陵の曲線を比べるとその違いは明白でその対比的な所も面白いが やはりこの一連の門と中庭と遠景の見せる実際の風景と創造の風景の組み合わせの妙が味わい所だろう。
左下の4枚の葉は手が届きそうなくらい大きく描かれている。このように窓の近くにある葉はつい触ってみたくなるが バルテュスもきっと同じだろう。