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P177。「クロード・エルサンの肖像」のための習作。 (大きさ不明) 油彩 1948
即興的に描かれた肖像画の習作で 背後の塗りや絵を囲む線は一気に引かれ 筆の早さが分かるくらいだ。バルテュスがこのように筆を早く使う事は珍しい。しかし表情は的確に捉えられ その口からは厳しい言葉が発せられているようだ。

P178。「クロード・エルサンの肖像」 92×73㎝ F30号 厚紙に油彩 (1948)
先と同じ人物だがこちらに激しさは無い。修道士であろう人物は横向きに描かれ 光と影と闇に二分化されている。背後からの光で顔は影になり 後頭部と顎にそえた手と椅子の一部 そして耳だけが光に照らし出されている。椅子と人物と修道着は形態として一体化し 確たるものとして落ち着いている。それは描かれた人物の人柄と彼のいる精神世界をも表している。神に仕える者の姿はこのように描くべきなのだろう。その思いは沈鬱ながら常に大きく深く 慎みがある。またその姿から隠された重責に耐えねばならない強靱な力の有り様を感じさせる。
左端に描き加えられた机の形は透視図法的には不自然で これがなければ人物と椅子だけとなり すっきりとするように思えるが 机を描く事で画面に奥行をもたらし 複雑にしている。机の上の果実もその役目に加担している。このような複雑化はバルテュスの作品の特徴で魅力の一つである。ここには写実的な描き方と変形単純化する具象表現描法が構成のために混在している。