118-120
P118。「テレーズの肖像のための習作」 55×46㎝ F10号 キャンバスに油彩 1939
P113の「テレーズ」の他にもう2点ほどテレーズの肖像画を描いているが この作品はそのための習作とされている。しかし他の2点のためと言うより 単に他よりも軽く描いただけの違いである。一般的には本制作を描くにあたってその準備のために描いたものを習作とするのが B氏の場合は曖昧で軽く描いたものも本制作とする事がある。それは習作のつもりで描いても表したいものが成立すれば 本制作と同じとする考えがあるからだろう。この作品は習作とされているが そういった意味では荒い筆致ながら本制作並みだ。めずらしくこちらに向けられ眼には戸惑いと心細さがあり そのために少し困ったような表情にも見える。また彼女の特徴のひとつである頑なさは眉と口元に表れている。

P119。「テレーズの肖像」 60×54㎝ F12号程度 油彩 1939
椅子に座って両手を前にして片方の手首を掴み その指は一本だけ真直ぐに伸びている。顔はちょっと振り返った感じに横に向けられ 眼はやや上を見ている。何かに気を取られたようにも見える。ぴったりと撫で付けられた髪の毛はとても細く いつも耳にかけられている。何気ない様子にも見えるが 表情がない。彼女の心の底には 波立つものはないにしろ 穏やかなものに満たされているとも思えない。

P120。「テレ−ズの肖像」 F10号 1939
これも何気ない姿を描いている。いつものように細い髪は撫で付けられ 耳にかけている。頭をわずかにひねって 上を見ている。何かの様子を伺っているようだ。その表情には密やかな静けさが寂しさとなって留まっているようだ。

B氏はこのような何気ない姿の微妙な表情を見逃さずに描くが それは心の底を描き出す事にもなっている。またこのような何気ない姿を描く一方でP117の「背にする裸婦」のような無理を加えて変形させた姿勢も描いている。この両極こそB氏の持つ幅なのである。作意と偶然。自然と変形。純朴と悪意。美と醜。