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P91。「アンドレ・ドランの肖像」 112.7×72.4㎝ M50号程度 木版に油彩 1936
ドランは1880年生−1954年没 フォービスムの画家。これが描かれた時は56才で氏とは28才の年の差があった。ドランについて氏は「彼を好きだったのは まるでシャツを着替えるように 気分と機嫌をあっという間に変えたとしても 深い教養を持つ 知性的な男だったからです。」また「彼の特技はパリの中のアクセントの違いを聞き分けられた事です。どの界隈の生まれか どこから来たのか。」さらに「いつも私に中国の将軍を連想させました。」と言っている。
この恰幅の良い 押しの利く政治家のような画家が着ている部屋着は氏が用意した物で これが似合っていて面白い。皇帝のような態度と運命に抗い無念の怒りを示すような表情 それに対して小さめの手と細い指先は まるで少年の手のようだ。そして薬指だけシャツの中に入れている。その対比的な組み合わせと繊細な細工も氏の発案だろう。もう一つ対比的なのが後ろに居る若い娘で さりげない姿勢ながら半裸に近い。立派な部屋着と半裸に近い薄着 大袈裟な態度とさりげない姿勢 強権者とか弱き者 また押し出しの利くドランは前へ 半裸の娘は後ろ下がって見え 遠近法の遠と近のようだ。さらにドランの後ろには額付きの絵が積まれているが 半裸の娘の後ろには何もない。この巧に演出された肖像画は描かれる人物をよく知る事から始まり 機知に富み的を得た発想をもってのみ 創りだせる味わいの妙だろう。