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P86。「女の肖像 (マダム・イレーヌ)」 80×55㎝ M25号程度 キャンバスに油彩 1935
この肖像画も小さな画面に全身を入れ 人物以外は椅子と棚と室内の床壁が描かれている。道具立てとしては簡素なのだが 画面構成としては必要充分で 右側の広い壁の面は抜きとしてあり 壁の下の幅木は壁と床の境目を飾り 棚と椅子は人物の脇役として画面を充足させ 変化も与えている。さらに安価でない家具や夫人のロングドレスとその生地の輝きは控えめながら この絵に華やかさを加えている。
そしてこの頃の氏特有の味わいも見られる。人物の大きめの頭と小さい上半身と薄い胸は不均衡で その気難しげな表情と合わせ見ると 一種の可笑しみと悲しみが同居しているように見える。そして衣装や全体のポーズの付け方 さらに小さな手帳を持たせる工夫などは氏の肖像画に与える特性が見られる。この頃の肖像画に描かれた人物達は決して笑顔や愛想を振りまかない。それは時代の反映か それとも氏の当時の感性だろうか。