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P84。「猫達の王」 71×48㎝ M20号程度 キャンバスに油彩 1935
バルテュスは自画像を3点描いているが これが最初の自画像である。自画像は画家にとって厄介な画題でもあるはずだが 多くの画家は自分を描く。厄介とは自分をどう捉えるかと言う問題が生じるからで 中には鼻につく作者の自尊心や自己顕示欲がむき出しになっているものある。この猫達の王と名乗る男はその厄介な自尊心と自己顕示欲を一捻り加えた演出でモノにしている。自らを王と名乗る事で自尊心と自己顕示欲の扱い方の厄介さを吹き飛ばしている。鷹揚な態度と気難しそうな表情の割りに上半身は小さく 肩はなで肩 ネクタイは短い。ここにはダンディズムの気高さと道化者の可笑し味が見て取れる。ありふれた安価な椅子の上には調教用の笞 笞はもっと獰猛な肉食獣に使うものだろう。それに英語で描かれた碑文まで用意して事を大袈裟さにしている。ここにはダンディズムの気高さや道化者と事を大袈裟にする可笑し味がある。このように自分を扱うとは何と芸達者なのだろう。それに機知がある。タダの王ではなく猫の王とは。元来猫は人に媚びないし 隷属せず 王のように振る舞っている動物なのだから すり寄る猫は頭が大きく貫禄がある。その王様とは王の中の王と言う事か。それとも裸の王様を演じているのか。バルテュス 弱冠 27才。猫達を味方につける。

猫が本格的に描かれるのは「ミツ」以来だが 「ミツ」とこの自画像を比べると 猫との関係が新たな展開をむかえた事が分かる。そして猫はこの後にはある特別な存在者としての重要な役割を与えられて行く事になる。