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P80。「レディ・アブディ」 186×140㎝ F150号程度 キャンバスに油彩 1935
これもピエール画廊の初個展に出品されているアブディ女史の肖像画である。しかし先のP72の「窓 (幽霊の恐怖)」と同じく時代違いの衣装を着た女史は窓辺に立っているが いったい彼女は何をしているのだろう。女史は薄布のカーテンを開けて窓に取り付くように外の様子をうかがっている。その姿は切迫しているようだが どこか無表情で空々しくも見える。彼女の眼はうつろで視線は外に向かっていない。
窓は外を見るばかりでなく 外から見られるものでもあるが それだけでなく窓とそこに寄る者はお話を生むのではないか。夜がお話を作り出すように。夜に口笛を吹く事は何故か禁じられているし 満月の夜には馬が死ぬと言われるように 窓辺にも何かが生じる。例えば若い娘が窓辺に立っていれば 家の中の退屈さを紛らわせようとする不満や人恋しい気持ちを思い起こさせるだろう。このような何かを思わせる窓辺。この絵の窓辺にはある種の感情がある。ヒステリックな憤り 内にこもった猜疑心 憂いと慰め 漠然とした不安などが見て取れる。彼女はきっと愛おしい人を待っているのだろうが その人がいくら待っても現れないために 行き場を失った想いはもつれた感情となって窓辺に纏わりついているのだろう。