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P75。「兵舎」 81×100㎝ F40号程度 キャンバスに油彩 1933
バルテュスは1930-1931の15ヵ月間 モロッコのケニトラとフェスで兵役についている。この時の事を幾つか語っているが マラリアとアメーバ赤痢にかかった事以外は楽しみも多くあったようだ。魅力的な異邦の国の建物の中でお茶を御馳走になったり 羊飼いの歌を聞いたり イスラム教徒の友愛を尊ぶ一面に感心したり またバルテュスは「千夜一夜」を通してアラビア文化に親しんでいたとも語っている。しかしこのモロッコの絵はそのようなささやかで美しい思い出とは異なっている。ここには兵役についている者の日々がある。命令のもとで役目を果たさねばならない者達の集団は 緊張と弛緩の日々を送る。事あれば武器を手にして 敵となる者に立ち向かわねばならない厄介さを背負いながら 何もなければ平穏を間抜けのように享受できる。
画面には幾人もの兵士が様々なポーズで描かれているが ここでは「同居の無関係性」はなく 白い馬を中心に 様々な姿勢の兵士が配置されている。言う事を聞かない白い馬の前に立って制止しようとする者 追いかけ損ねる者 傍観する者 取り仕切る者 出かけていく者。ここには異国の地で暮らす兵士達のありがちな出来事を強い陽光と滑稽さを持って描いている。このような日々の出来事を通して兵士達の強気と不安と平穏の間に宙吊りにされている様子が伝わってくる。