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P41。「ムーラー・エドウィックの肖像」87×65.7cm F25号程度 1928
この頃描いた3人の肖像画の中の1点である。外形線を使わずに丹念に筆を置く塗り方がされている。色彩は明るめだが落着きがある。色彩の明度と彩度の扱い方を試しているようだ。肘を上げた左腕は彩度と明度が落とされているので奥まってに見え それに対して両足の上に置かれた右腕は明度も彩度も高いので手前にあるように見える。腕や肩や腰の部分の赤茶は影の一種として使っているのだろう。このような前後関係による立体感と空間性を描き出すための色調を確かめているようだ。

P42。「ムーラー・ゲルドルードの肖像」73×60cm F20号 キャンバスに油彩 1928(1984) 
この肖像画は1928年に描かれたが 56年後の1984年に描き直されている。テーブルの上のお茶道具は消され 人物の表情は穏やかになっている。バルテュスはこのような描き直しを10点ほど行なっているが これは特に間隔が開いていて56年後の手直しとなる。若い頃の作品に晩年になって手を入れる事自体が珍しく ほとんど別な作品になったと言って良い。他の手直しで間隔の開いているのは50年後 29年後 17年後 あとは5年後 2年後 1年後である。