第5章 まとめ

この章はバルテュスの作品についてのまとめである。第3章で紹介した作品の主な特徴は 厳選された画題と多様に解釈できる内容 そして表現様式の独自性と変化である。画題は人物画を中心に風景画 静物画などがあるが そのような領域分けを越えた自由性がある。内容は主に複雑で謎めいているが その精神性の高さは常に気高い。表現様式は独学による写実表現から具象表現へ変化し 自らの作り出した様式を模倣する事なく 一作ごとに全てを費やすような作風は見応えがある。また作風が変わっても作品から立ち昇る感性の放香は変わる事がない。

以上が主な特徴だが もう少し詳しく具体的な点を 疑問として挙げると以下のようになる。これらの疑問点はつまりバルテュスの作品の特徴でもあり 謎でもある。

・ 1 なぜ同じ場に居ながら無関係なのか。
・ 2 なぜ身振りと姿勢にこだわるのか。
・ 3 なぜ人物達は石像化したように動きがないのか。
・ 4 なぜ挑発的な裸体を描いたのか。
・ 5 なぜ若い娘達を描くのか。
・ 6 よく言われる官能性とは。
・ 7 なぜ顔や身体を変形させるのか。
・ 8 なぜ猫を描くのか。
・ 9 なぜ鏡を描くのか。
・ 10 なぜトランプを描くのか。
・ 11 なぜ作風や技法が変わるのか。
・ 12 なぜ時に簡素に 時に複雑に描くのか。
・ 13 なぜ何時の時代か分からないように描いてあるのか。
・ 14 なぜ同じ画題を繰り返すのか。
・ 15 なぜ過去の作品を描き直すのか。
・ 16 なぜ現代の絵画を否定するのか。
・ など

これらの疑問は一点づつの作品解説とは 別に考えてみる必要がある。その答えは一つではないだろうが氏の核心に近づくために欠かせない登竜門である。しかし深読みのし過ぎは禁物である。作品は作者の考えや表現技術以上に 何かを成立させてしまう事があるし 特に氏の作品は作者の意図がどこまでおよんでいるのか計り知れない所があるからなおさらである。しかし深読みし過ぎたところで氏は否定するどころか その的外れと拡大解釈を楽しむに違いない。